号泣する準備はできていた

号泣する準備はできていた (新潮文庫)

はじめに読んだときにはあまり印象に残りませんでした。江國 香織さんが書いた短編集です。すごい、感性で。だからこそ、僕にはこの繊細な物語たちは理解できないのだろう、と。
読んだのは文庫版です。本を棚にしまった後しばらくの日々、作者のあとがきが頭の中にもやもやと残っていました。一部分を引用します。

悲しみを通過するとき、それがどんなにふいうちの悲しみであろうと、その人には、たぶん、号泣する準備ができていた。喪失するためには所有が必要で、すくなくともたしかにここにあったと疑いもなく思える心持ちが必要です。

だから、満ち足りた日々、本当に楽しい時間、大切なものと共に。そのときには、たぶん、もう、号泣する準備はできている。それがわかっていれば大丈夫。きっとうまくやっていける。

そうして、もういちど本を手に取りました。本の中には、悲しみが通り過ぎた、12篇の物語。