呪縛

息抜きや気が詰まったりしたときには、よく家のそばを自転車に乗って散歩したりする。家の裏側にある小学校をぐるっと一周回るのがお決まりのコースだ。
最近は猫が何かと気になっている。寝っ転がっていたり、優雅に道を歩いていたりと結構たくさんいるもんだ。その中に、白に黒の大きな斑点の付いた乳牛柄の猫がいて、これがやたらと足にまとわりついてくる。前に、自転車を止めたら、その猫が勝手によってきた。僕の足に体をこすりつけながら行ったり来たりして、それが気持ちよく、ついしばらく立ち止まってしまう。いい加減立ち去ろうとして、それからがまた一苦労で、自転車のあとを走って追いかけてくるもんだから、危なっかしい。止まると、またすりすりと身を寄せてくる。その時はええいと、その時は心を鬼にして全速力で自転車をこいで、後ろを振り返らずに、走り去った。

別の日に、また自転車で散歩をしていると、今度はおじさんがその猫に捕まっていた。どーやら、おじさんも自転車に乗っていて、なかなか猫を引き剥がせないっぽい。いつまでやっているだろうと思って,一周回った後にもう一周と小学校をまわって戻ってくると、おじさんは一周前の地点から3メートルほど前に進んでいた。そのあとも、何周か回っていると、やっぱりおじさんは一周後とに3メートルずつしか前進できずにいる。たぶん、自転車というのが良くなくなかった。歩きならばただ好きなだけ一緒に猫と歩けるのに自転車は猫を巻き込みそうでできないのだ。おじさんの猫への思いと、猫に構ってはいられないという思いの葛藤が3メートルなのだろう。

そんなで、僕がぐるぐる何周まわったか後に、おじさんはようやく振り切ったらしく、猫だけがぽつんとしていた。猫に捕まる前に、急いで家に帰ったあと、また捕まってしまったと、やるせなくなった。